食卓は食事をするだけでなく、家族とのコミュニケーションの場であったり、作業スペースとしての利用など、用途は多岐にわたります。
トイレや部屋の掃除などは毎日できなくても、食卓は毎日清潔にされている方が多いのではないでしょうか。しかし、キレイにしているはずが、その方法を間違えてると、逆に食卓の雑菌を増やす原因になっている可能性もあります。
このコラムでは、食卓の正しい除菌方法と清潔に保つポイントをご紹介しています。ぜひ正しい方法を実践してくださいね。
家の中で菌が気になる場所は?
富士経済の調査によると、2020年はコロナウイルス感染症の流行により、家庭用衛生関連用品の国内市場が急増したという結果が出ています。
みなさんも、感染対策の一環として、以前よりも除菌への意識が高まった方も多いのではないでしょうか。特に、小さな子どもがいるご家庭では、どんなところも触ってしまう好奇心旺盛な子どもの行動には例え家の中でも注意を払ってしまいますよね。
家の中で雑菌が気になる場所で思い浮かべるのは、まずトイレやお風呂などの水回りや、人の手がよく触れるドアノブなど気になる方も多いかもしれません。しかし、実際には食卓にも雑菌が多いということが花王の拭き取り検査でわかっています。詳細はこちらからご覧ください。
→花王「くらしの現場リポート」へ
花王の検査によると、家の中で最も菌が多いのは「キッチン」だったそうです。そして、なんと食卓はダイニングの床、トイレの床と同じくらいの汚染具合とのことでした。
毎日キレイにしているはずの食卓ですが、床と同じというのはショックを受けますよね。なぜここまで雑菌が多くなってしまうのでしょうか。
なぜ食卓は雑菌が多いの?
食卓に雑菌が多い原因
食べこぼしで雑菌が繁殖
食卓は食事をする場所ですから、、どうしても食べこぼしてまったり、おつゆが飛んでしまったりすることがありますよね。
食べこぼしなどはいわば雑菌のエサ。そのため、雑菌が繁殖するのを助長してしまう可能性があります。
食事以外の、多目的利用
食卓を勉強やパソコン作業、手芸などさまざまな形で利用される方は多いのではないでしょうか。そのときにゴミが落ちたり、汚れがついたりすることも。
特にスマホは1日中どこでも触る機会があることから、手からかなりの雑菌が付着している可能性があります。そのスマホを食卓に置くことで、食卓にも菌が付着してしまいます。スマホに付着する菌やその正しいお手入れ方法については別のコラムでご紹介していますので、よかったらご覧ください。
→「【検証】トイレよりも汚い?!スマホの正しい除菌・お手入れ方法と対策グッズをご紹介」へ
会話など飛沫の飛散
咳やくしゃみをすると飛沫が飛散するイメージはありますが、会話によっても飛沫は飛散します。以下の動画は、理研・豊橋技術科学大・神戸大がスーパーコンピュータ「富岳」によるシミュレーション計算の結果を可視化したものです。
このシミュレーションでは飲食店のテーブルを想定しているため、家庭よりは小さめな食卓にはなりますが、飛沫が食卓に付着しているのが分かりますね。飛沫にはさまざまな菌が存在しているため、食卓に菌が付着してしまいます。
食卓を清潔に保つためのポイント
食卓での食べこぼしや、多目的利用による雑菌の付着、飛沫の付着などは日常的に発生してしまいます。どうしたら防げるのでしょうか。ここからは具体的に食卓を清潔に保つために出来る方法を紹介します。
食卓の水拭きは要注意!
食事の前後もしくはどちらかに食卓を水拭きしていませんか。また、それ以外にも食卓に汚れを見つけた場合にふきんで水拭きする方が多いのではないでしょうか。
実は、水拭きをすることには雑菌を逆に増やしてしまいます。
衛生微生物研究センターは、ふきんに付着した菌が時間経過によってどのように変化するのかを調査しました。以下が実験概要をまとめたものです。
これらはご家庭で一般的に使用する環境を想定しての実験ですが、今回の実験と同様の使用方法をしている方も多いのではないでしょうか。
それでは、実験結果を見ていきましょう。
なんと、7日後には約18億個の雑菌がふきんにいたというのですから驚きです。この結果をご覧いただくと、ふきんの水拭きは食卓に菌を広げているということもイメージがつきますよね。
実際に、この実験の続きである7日目の朝に、上記実験で使用したふきんを使って消毒をした清潔な食卓(菌数:検出限界以下)を水拭きしたところ、76,000個/10㎠の雑菌が検出されたのです。
今回の実験内容とは異なりますが、室内の湿度も気を付けることをおすすめします。
室内の湿度は40~60%を保つことが快適に過ごせる目安といわれています。これは、ウイルスやカビなどの繁殖が抑えられる湿度です。今回は梅雨時期を想定した実験ということで75%と高めの湿度設定になっていることも、カビなどの菌類やダニ、ウイルスが活発になる要因と考えられますので、湿度をコントロールすることは菌を増やさない1つの手段としておすすめいたします。
それでは、食卓をキレイに保つための方法をご紹介します。
正しいテーブルの拭き方を知ろう
ポイント① 拭く方向を意識する
食卓を拭くときにどのようにして拭いているか思い出してみてください。
同じ場所を何度も拭いたり、向きを変えたりしていませんか。ふきんで食卓を拭くと、汚れや菌が付着しています。その状態で何度も拭くと、付着した菌を食卓に広げられてしまうことになりかねません。
そのため、一方向に1回だけ拭くことがおすすめです。
また、食卓の角や物を置いている場合にはその付近などは拭き残しやすい傾向があるため、念入りに拭くようにしてください。また、物がある場合には、ふきんの汚れや菌が手に付着している可能性があるため、先に物をどかしてから拭くほうがよいでしょう。
ポイント② 水拭きではなくアルコール除菌剤を使う
すっかり生活の一部となったアルコール除菌ですが、メリット・デメリットはご存じでしょうか。しっかり理解して適切な使い方ができるようにしましょう。
■メリット
- アルコール製品のうち、医薬品・医薬部外品に認定されているものは手指消毒が可能
- 厚生労働省から新型コロナウイルスに対する対策として効果を認められている(2021年3月5日現在)
- 揮発性が高く、乾くと何も残らないため二度拭きが不要
- 保存性に優れている
引用元:新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
■デメリット
- ノロウイルスなどのノンエンペローブウイルスには効果がない
- ヒトへの刺激が強く、肌荒れの原因になることもある
- 火の元がある場所では引火の恐れがある
- ニスで塗装した家具やワックスがけした床、革製品などには使えない
さまざまなタイプのアルコール除菌剤が販売されていますが、「キッチン用」「トイレ用」などの違いをご存じでしょうか。選ぶときには「目的に適した濃度・成分の製品」を購入しましょう。
一般的に分けられているのが、手指「消毒」用とモノの「除菌」用です。それぞれの濃度の目安が以下になります。また、濃度の他にも含まれる成分が異なっています。それぞれの場所に適した製品となっているはずですので、推奨された使用方法を行うようにしましょう。
手指消毒用:60~80%
モノの除菌用:35~70%
また、企業によっては濃度を公表していない場合もありますので、企業の信用性などをよく検討されることをおすすめします。
ポイント③ 塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を活用する
世間的に名前が浸透してきた次亜塩素酸ナトリウムですが、メリット・デメリットはあまり知られていないかもしれません。食品添加物に使用される200ppmの濃度に薄めたときのメリット・デメリットを以下にご紹介します。
■塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)のメリット
- 厚生労働省から新型コロナウイルスに対するモノの除菌対策として有効と認められている(2021年3月5日現在)
- ノロウイルスなどのノンエンペローブウイルスにも効果を発揮する
- 揮発性が高く、乾くと何も残らないため二度拭きが不要
- 除菌だけでなく消臭・防臭効果がある
引用元:新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
■塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)のデメリット
- 「医薬品」「医薬部外品」認定されている製品がないため、手指などヒトには使用できない
- 金属への腐食作用・革などへの漂白作用がある
- 揮発しやすく保存性が良くないため、保存期間が短い
アルコール・次亜塩素酸ナトリウムともに一長一短であることが分かりますよね。どちらの製品がよいのかわからない方もいるのではないでしょうか。
実は、次亜塩素酸ナトリウムの効果をそのままに、従来の除菌成分のデメリットを解消するべく開発された「安定型次亜塩素酸ナトリウム」という成分があります。手指などヒトには使用できないものの、それ以外には幅広い用途で効果が期待できる成分です。詳細については、以下のコラムをご覧ください。
→「安定型次亜塩素酸ナトリウムの効果は?安全性や使い方について」へ
食卓の除菌に便利なおすすめ対策グッズ
除菌ウェットティッシュ
除菌ウェットティッシュの成分は、アルコールタイプが多く販売されています。揮発しやすい次亜塩素酸ナトリウムにはこの形状はあまり向いていません。除菌ウェットシートは、使い切りタイプのため、衛生的です。シートに圧をかけて食卓をしっかり拭けるように、厚手で大判のものや汚れを絡めとるためにシート表面に凹凸があるものなど、食卓用に特化した除菌ウェットティッシュがおすすめです。
ただし、1回拭く毎に1枚消費することを考えると、コスパの面や環境への配慮という面はデメリットといえます。
除菌スプレー
除菌スプレーの成分は、アルコール・次亜塩素酸ナトリウムどちらも多く販売されていますが、先ほどご紹介した安定型次亜塩素酸ナトリウムの販売数が増えてきています。
このタイプの場合には、ふきんやティッシュなどに除菌スプレーを噴霧して使用します。スプレーすることで量を調整できるので、除菌ウェットティッシュに比べて食卓の大きさや数を選びません。
また、ふきんを使用する場合には、食卓を拭き取ったあとにふきん自体に除菌スプレーを噴霧して乾かすことで、ウイルスや菌の繁殖を抑えつつ、くり返し何度も使用できるため経済的ですし、環境への負荷が少なくて済みます。
デメリットとしては、ふきんを使用する場合には定期的に洗濯するなどする手間がかかること、スプレーの噴霧具合によってはムラが生じる可能性があることです。
テーブル以外でもよく触れる場所の除菌も習慣にしましょう!
食卓の除菌についてご紹介しましたが、その他にもキッチン回りには除菌したほうがよいものがいくつかあります。
水道の蛇口やレバー
生肉や魚を触った、床に落ちたモノを拾ったなどに手を洗うときには、レバーや蛇口を触ります。そうすると、雑菌が付着してしまいますので定期的に除菌しましょう。
キッチンの手拭きタオル
シンクを使用したあとには必ずタオルで手を拭きますよね。
手洗いを毎回正しく行うことができていれば雑菌も少ないかもしれませんが、料理の最中や急いでいるときにはなかなか難しいことではないでしょうか。水道と手拭きタオルはセットで使用することが多いため、どちらか片方ではなく両方除菌することをおすすめします。
水切りかごの受け皿
水切りかごの受け皿は、ずっと水がたまった状態になりやすいですね。
水分は雑菌が繁殖するための条件のひとつのため、水がたまったままでいるとどうしても雑菌の温床となってしまいます。実際に、どれくらいの菌がいるのか受け皿にいる雑菌の計測実験が行われています。詳細はこちらからご覧ください。
→@Press「キッチンの雑菌増殖スポット調査 第1弾 食器用水切りかごには約200万個/10cm2の雑菌が潜んでいる!? 使用する前には、高濃度アルコール除菌スプレーを吹きかけ、しっかり除菌を」
受け皿の水はこまめに捨てるようにして、夜寝る前などの長時間使用しないときに、ティッシュなどで水気を拭き取ってから除菌スプレーを吹きかけておくことで除菌の効果が見込めます。
よくある質問
ふきんではなくキッチンペーパーを使用しても良いですか?
キッチンペーパーは、1回の使い切りする場合には毎回清潔なものを使用できるのでおすすめです。最近は、洗ってくり返し何度も使用できるタイプのものも販売されています。その場合には、日をまたいでくり返し使用すると、ふきんと同様に雑菌が繁殖する可能性があるので注意しましょう。
食卓用のアルコール除菌グッズは手の除菌にも有効ですか?
食卓用のアルコール除菌と、手指消毒に使われるアルコール消毒は濃度や成分が異なります。手指消毒に有効な目安はおよそ60~80%と高濃度であり、食卓用の除菌グッズはおよそ35~50%です。効果を得るためには、目的に合わせた製品を使用するようにしましょう。
まとめ
毎日の生活に欠かせない食卓ですが、実は雑菌が多い場所でした。
食卓をキレイにするためのふきんでの水拭きが、逆に雑菌を増やしている可能性があります。
清潔な食卓を保つことがポイントは、除菌アイテムを使用する、拭く方向に気をつけでした。
正しいお手入れを行うことで、より安心できる食卓lifeを送りましょう!