春の訪れが徐々に感じられる3月。
寒い冬の間、こたつから離れられなかった方も、春はお出かけしたくなる季節です。車に乗って遠出したり、イベントや行事に興じたりと、野外での活動を思う存分楽しみたいですよね
しかし、いつからか春といえば花粉の季節。家の中だけでなく、実は車の中も密閉空間になりやすく、花粉が溜まり続けてしまう可能性があります。花粉症をお持ちの方は、車の中でも症状に悩まされたこともあるのではないでしょうか。
せっかくのドライブを快適に楽しめるよう、本コラムでご紹介する車内の花粉対策を実践してみてください。
※2021年時点、新型コロナウイルス感染症による移動制限など、国の対策や状況にあわせて行動するようにしましょう。
車の中でも花粉対策は重要?
そもそも、車の中の花粉を気にされたことがない方もいるかもしれません。改めて、なぜ必要かというところからご紹介します。
どこから花粉は車の中に侵入するの?
当然、車の中にも花粉は侵入します。
車の窓を開けなくても、ドアの開け閉めのときに直接入ってきたり、乗車したヒトの服やバッグなどに付着していたりするため、侵入をゼロにすることは難しいのです。
カーエアコンを外気導入にされている場合も多少は侵入しますが、主な侵入経路は窓やドアの開閉です。
侵入した花粉はどこに溜まりやすいの?
ドアの開け締めなどにより侵入した花粉は、どんどん車内に溜まってしまいます。
基本的には、ホコリと同じ場所に溜まりやすいです。
凸凹している部分や隙間部分、車体の隅などですが、具体的には以下の部分に溜まりやすいと覚えておきましょう。
花粉症による運転中のリスク
すでに花粉症を発症している方は、運転中に症状が出ることによっては事故につながってしまうケースがあります。
実際に、2016年に花粉症によるくしゃみが原因で死傷事故を起こし、重い判決となったケースもあるほど運転手にとって花粉は深刻な問題といえます。
花粉症の症状によるくしゃみや涙目、花粉症の薬を服用することによる眠気や注意散漫になるといった副作用は運転に支障をきたす可能性があります。そのため、花粉症を発症している方は、花粉シーズンの運転に関しては運転が可能な状態かどうかというところからかかりつけ医の先生などに相談しながら慎重に判断するようにしましょう。
花粉症を発症していない方も、対策をして花粉の摂取量を減らすことが大切になってきますから、花粉対策を日ごろから行うことで、安全なドライブにつながります。
車でできる花粉対策や工夫
花粉が車内に侵入するのを100%防ぐことは難しいですが、対策をして少しでも侵入する量を減らしていくことが大切です。
ポイント① 花粉を侵入させない
心地よい春、運転中に窓をあけて風を感じたいところですが、運転中は窓を開けないことが大切です。また換気も窓を開けて行うのではなく、エアコンによる換気をオススメします。窓を開けると花粉がそのまま侵入してしまいますが、エアコンを通すことでエアコン内部のフィルターである程度除去することができるからです。
車内のエアコンは、車内の空調管理の方法として内気循環と外気導入の切り替えることができます。
それぞれの仕組みと、花粉対策にはどちらのほうがオススメなのか解説いたします。
内気循環とは
車内の空気を循環させることで温度などの空調を調整することです。密閉空間をつくることによって以下のメリットが挙げられます。
- 冷暖房の効率が上がる
- 花粉の侵入を防ぐ
- 排気ガスなど汚れた空気の侵入を防ぐ
- 車内の温度が安定することでエンジンにかかる負荷が軽減し、燃費が良くなる
外気導入とは
外の空気を車内に取り入れて空調を調整することです。新鮮な空気を取り入れることによって以下のメリットが挙げられます。
- 換気ができることで、車内の湿度・ニオイ・菌・ウイルスなどを外に逃がせる
- フロントガラス、窓ガラスのくもり防止に
- 酸素が取り入れられることで眠くなりにくい
- カビの発生を抑えられる
これだけ見ると花粉対策においては内気循環がよさそうに思えますが、外気導入をするようにしましょう。
理由は、JAF(日本自動車連盟)が排ガスや花粉を嫌い、車の空調を内気循環にした場合、車内環境に問題がないかについて検証を行った結果に基づきます。
【検証内容】
同車種2台を使用。空調を内気循環と外気導入に分け、高速道路、郊外・山道、市街地を各1時間ほど走行。それぞれ4人で乗車し、走行中の二酸化炭素(CO₂)、酸素濃度(O₂)など車内の空気の質と花粉の量を測定した。
※車両のエアコンフィルターは新品に交換
※テスト中は窓を全閉とし、乗降はなし
花粉の量については車内にプレパラートを置き、付着した花粉の量を調べた。
【結果】
外気導入と酸素濃度で結果が大きく変わったのは二酸化炭素濃度。
花粉量は外気導入であってもほとんど検出されなかった。
上記の結果から、JAFでは以下のようにまとめています。
交通環境や天気など状況に応じて、内気循環と外気導入を切り替えると良いが、東北大学大学院医工学教授の永富良一氏は「いくつかの研究報告によるとCO₂の濃度が3,000ppmを超えると、疲労感の増加や注意力の低下、さらに、眠気や頭痛を訴える人が増加します。短時間では問題がないという結果もあるので一概には言えませんが、CO₂が増えるほど影響が大きくなるのは明らかなので、運転中はできるだけ外気導入にするか、最低でも1時間に1回は換気するといいでしょう。」という。
また、トンネル内の走行や前方を走行する車の排ガスなどが気になるときは内気循環に切り替えると良い。
引用元:JAF「ドライブ中で、空調は「内気循環」「外気導入」どちらがいいの?」
この結果は車の車種や天候などに左右されることがありますが、基本的には外気導入をメインに使用して換気を行うことがオススメです。逆に花粉が気になるからといって、長時間、内気循環のみを使用することは健康的にも安全運転のためにも控えたほうがよいでしょう。
ポイント② 花粉を除去のフィルターを活用する
外気導入をメインに使用することを考えると、エアコンのフィルター性能がよいものを使用することが花粉を侵入させないための対策の中でも大切なポイントとなります。
一般的なエアコンのフィルターの目の大きさは約100ミクロンです。
しかし、花粉の大きさはスギ花粉が約30ミクロンのため、フィルターを通過してしまいます。
花粉対応ものや、花粉よりも粒子が小さいPM2.5対応のものを選ぶことで、効果が期待できます。
注意点は製品に記載されている交換時期をしっかり守ることです。
どんなに高性能なフィルターを利用しても、フィルターにホコリやゴミ、花粉などが蓄積した状態では効果を発揮できません。それどころか、きちんと空調管理できない状態が続くと、エアコンの故障や車内の異臭につながります。また、フィルターの中にカビや雑菌が繁殖してしまうと、運転するときに雑菌などを吸い込んでしまう可能性もあります。
花粉対応のエアコンフィルターを使用するだけでなく、時期が来たら交換するところまで定着させるまでが花粉対策と覚えておきましょう。
ドライバーや同乗者ができる花粉対策
ポイント① ドライブ中の窓の開け閉めは最小限にする
車内に新鮮な空気を取り込みたいという方も、外気導入にしておくことで、車内の空気を入れ替えられます。
2020年に行われたスーパーコンピューター「富岳」の分析によると、窓をすべて締め切った状態で外気導入を実施したところ、約30秒でほぼ空気が入れ替わったとのことでした。その様子を映した動画がこちらになります。よかったらご覧ください。
また高速道路の料金所での支払いもETCにすることで窓を開けずに通過することができますね。まだ、ETCにされていない方は導入されることがオススメです。
ポイント② 花粉が付きにくい服装にする
実は、服装の素材によって花粉の付着しやすさというのは変わってきます。
以下の表に花粉の付着率を表しています。
例えば、まだ寒さが残る場合に、ウールのコートを羽織ると花粉がとても付着しやすくなってしまいます。その場合にはダウンにするなどして工夫するとよいでしょう。
ポイント③ 車に乗る前に服や体に付着した花粉を不活性化する
自然がキレイな場所に行き、車から降りて景色を楽しむというシチュエーションがあったとします。
しかし、そのまま車に乗ってしまうと花粉を車内に持ち込んでしまうことになりますので、乗る前に服についた花粉をなんとかしたいところです。
よく粘着テープで取るという対策もありますが、大変なうえにムラになって取れていない部分ができてしまうということも。
そこで、オススメなのが「花粉の不活性化」です。
不活性化とは、花粉のアレルゲンとしての機能を失わせることをいいます。
そもそも、花粉症による症状はアレルギーの一種です。アレルゲンとは、アレルギーの原因となる物質のことをいいます。
免疫の働きが、現代文明による環境やライフサイクルの変化によって異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態が「アレルギー」です。
引用元:国立成育医療研究センター「アレルギーについて」
つまり、花粉自体がさまざまな症状を引き起こすわけではなく、花粉を排除しようとした過剰なカラダの反応の結果がさまざまな症状につながるのです。そこで、花粉を不活性化させる(活動できない状態にする)ことで、カラダの過剰な反応が起きにくくなるというアプローチ方法です。
では、どのように不活性化させるかというところですが、さまざまな方法がありますが洋服へのダメージをなるべく抑えたいという点を考慮すると安定型次亜塩素酸ナトリウムという成分を使用することがオススメです。
どんな成分なのかについてもご紹介していますので、気になる方はこちらからご覧ください。
→「安定型次亜塩素酸ナトリウムの効果は?安全性や使い方について」
侵入してしまった車内の花粉対策
侵入してしまった花粉への対策としては、2つの方法があります。
「花粉を取り除く」方法と先程と同様、「車内の花粉を不活性化する」方法です。
すべての花粉を取り除くことは難しいことと、乗車のたびに普茶した花粉が持ち込まれることを考えると、こまめに不活性化しつつ定期的にしっかり取り除く方法を行って併用することがオススメです。
掃除する
車内を掃除するとき、まず何から行っていますか?
もし、最初にハンディモップなどを使ってホコリをはたいていたら要注意です。花粉が空中に舞ってしまい、それを吸い込んでしまう可能性があるからです。それではどうすればよいかというと、花粉には、水分に付着しやすいという性質があります。そのため、ウェットシートなど濡らした布でホコリや汚れをふき取りましょう。
最後に、先ほどご紹介した安定型次亜塩素酸ナトリウムを噴射した布で拭き上げると、取り切れなかった花粉の不活性化もできるのでオススメです。
空気清浄機や加湿器を活用する
空気清浄機を使用することで車内の花粉を空気清浄機内のフィルターで除去してくれます。
また、花粉は水分と付着すると重くなり、車内に舞いにくくなるという点で加湿器も花粉対策として期待できます。
シガーソケット・USB・ソーラーパワーなどから給電する車載用の空気清浄機や加湿器も出ていますので、気になる方はご覧ください。
それぞれの注意点としては、まず空気清浄機が特に有効なのは内気循環にしている場合です。しかし、内気循環で空気清浄機を使用しても二酸化炭素濃度を低下させるものではないので注意しましょう。
加湿器の場合は湿度が高くなりすぎた場合にフロントガラスが曇ったりカビが発生したりする可能性がありますので、エアコンを外気導入モードにして調整することが必要です。
よくある質問
車内の掃除はどのタイミングでするべきですか?
花粉が飛散する天候や時間帯は避けた方がよいでしょう。そのため、「雨か曇りの風がない日」の「午前中か20時以降」がオススメです。 車内に花粉が溜まっている可能性があるため、マスクを着用して行うようにしましょう。
車内のどこに花粉は溜まりやすい?
花粉が溜まりやすい場所は、ホコリと基本的に同じです。凸凹した部分、隙間や車内の隅などです。具体的にはダッシュボード、座席シートの縫い目、ドアやハッチの隙間、フロントガラスや窓ガラスとの隙間、メーターやスイッチ類や床などが挙げられます。
車内の花粉は完全に取りきることは可能ですか?
完全に花粉を取りきることは難しいでしょう。窓やドアを開けたときや、衣服に花粉が付着したまま乗車したときなどに侵入し続けます。そのため、花粉をゼロにするというよりは、車内に溜まっている花粉の量を低い状態で保つように割りきりましょう。定期的な車内の掃除、こまめな花粉対策を続けることが必要といえます。
まとめ
車内は密閉空間です。
しかし、エアコンを外気導入すること、その際に花粉対応フィルターにすることなど工夫することができれば上手に換気しながら花粉対策をとることができます。
定期的な掃除やお手入れは手間がかかりますが、その分ドライブも快適に、また安全に過ごすことができるということを考えれば必要なことですよね。花粉を侵入させないための対策、侵入した花粉を除去する対策、花粉を不活性化する対策と3つご紹介しました。快適なドライブのためにぜひ実践してみましょう。